「ドライバー遺伝子」でがん治療が変わる!
1981年から日本人の死因トップになった「がん」。急速な高齢化を背景に患者数は増え続け、現在約3人に1人はがんで死亡します。とくに5年後生存率が低い「難治がん」は、効果のある薬の開発が遅れてきました。細胞の個性に関係なく同じ抗がん剤を使ってきたからです。
要因の1つは、同じ臓器のがんでも性質に違いがあることがわかりにくかったため。ようやくがん細胞の顔は見え始めました。がんの本丸を攻める治療法の開発が動き出しています。
新しい治療法は、がん細胞の個性に注目したのが特徴です。遺伝子を調べてがん細胞の増殖を促す「ドライバー遺伝子」を特定。患者1人ずつ種類が異なるため、遺伝子を解析したあとに薬で治療します。
治療法がない肺がん患者を対象に、国立がんセンターなどは「RET融合遺伝子」というドライバー遺伝子に着目。国内では未承認の甲状腺がん治療薬「バンデタニブ」を投与する治験を今年から始めました。
新薬を投与した患者への効果は良好です。RET融合遺伝子を持つ人は肺がん患者のうち1~2%にすぎませんが、最終的に治療効果が確認できれば、3~4年以内に新薬として申請されます。
「膵がん」でも、ドライバー遺伝子を標的にした治療の検討が始まっています。香川大学で手術を受けた約100人の膵がん患者を対象に、「KRAS」など4つの遺伝子を調べたところ、いずれも変異があると5年生存率はもっとも低かったのです。
このため、膵がんは4つの遺伝子の組み合わせで悪性度が決まると指摘。4つのすべての遺伝子に異常がある人は転移しやすく、手術後に抗がん剤投与を始めるなどの治療も効果がある可能性が高いのです。